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高橋源一郎「星降る夜に」

出典:『新潮』2011年4月号
評価:★★☆☆☆

妻から

「あたし、勘だけは鋭いのよ。あんた、絶対、ものになると思うわ」(p.100)

といわれ、「だから、わたしは、書きつづけた(p.100)」と語る小説家志望の男が、40歳になっても小説家として芽が出ず、堪忍袋の緒が切れた妻に今度は

「十五年もなにをしていたと思う? ずっと、他人の給料の計算をしていたのよ。美容院に行くのは三ヵ月に一回! さっき、十五年ぶりに、鏡で自分の顔をじっくり見たの。誰、これ? なに、この、おばあちゃん!」(p.100)

と不満をぶつけられ職探しに。ハローワークで紹介してもらった、入院中の子供(助かる見込みなし)にむかって本を朗読する仕事につくという話。

短編でこういう内容を展開しようとすると、筋書きだけになってしまって雑な印象をうけました。小説家を目指す夫とそれを十五年も支える妻なんて、それだけでいろいろドラマがありそうだし、さらに職探しだっていろいろ何かありそう、もちろん仕事先でもいろんな思いがあるだろう、そういうぜひとも丁寧に描いてほしいところも、この分量ではほとんど何にも描けていません。加えて、小説家志望の男もその妻も類型的だし、死を待つ子供を出すっていうのも極めて安易。

そもそもこれを書いた高橋源一郎の文面から「ここを読ませたい」みたいなものがものが全然伝わってきません。村上春樹の劣化版のような文体で、こんなおセンチなことを書かれても、「源ちゃんっぽいよね!分かる分かる」といってくれる察しのよい読者にしか伝わらないんじゃないでしょうか、これ。

あらかじめいっておけば、『ジョン・レノン対火星人』は小説の面白さを僕に教えてくれた大好きな一冊でしたし、『日本文学盛衰史』は日本の小説の書き方を確実に一歩すすめてくれた大事な仕事ですので、好きな作家のうちの一人なのは確かなんですが、この作品では読者に対する甘えというか、書き手の力の抜きすぎが感じられてしまい、あまり評価できません。まあ、十年に一回ぐらいの大ホームランを気長に待つのがこの作家のスタイルなのかもしれませんね。そういう仕事に期待しておけば、短編や連載は適当に流し読みしていいんだろうなとこの「星降る夜に」を読んで改めて思いました。
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