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千早茜「縛す」

出典:『群像』2013年4月号
評価:★★☆☆☆

30歳にさしかかるマンネリ若夫婦が温泉旅行をする話。道中どころか旅館でも携帯電話から目を離さない妻のうっとうしさがものすごくよく伝わってきて、夫の視点に共感させられました。妻に話かけても目すらあわせてこず、充血した目で携帯画面をじっと見る、しかし夫婦の力関係は夫が妻に譲ることで均衡をたもっており、妻の心ここにあらず状態には、読んでる側としてはいらいらしっぱなしでした。僕が男性だからなのかもしれないけれど、たぶん女性でもこんな女が友人で旅先についてきたら、心の中ではシラケちゃうんじゃないでしょうか。それくらいイラつかされました。嫌な人物、うっとおしい人物を描けるというのはポイント高いと思いました。

で、この力関係の均衡をどうやって崩すかが見せ場ですが、本作では夫が妻を縛って放置することによって力関係を逆転させます。SMですね。

温泉旅館への道中で、「一般的にはね、女性は縛られた方が落ち着くみたいよ(p.149)」と夫に話しかける妻。「一般的に」という前置きがありますが、縛られた翌朝の妻の反応はこんな感じでまんざらでもない様子。

かちゃかちゃという小さな音で目が覚めた。障子を通した朝の光が部屋を青白く染めている。布団から身を起こすと、鞄から化粧ポーチを取り出していた麻子が振り返った。
「化粧も落とさないで寝ちゃったじゃない。メールやツイッターの返信もできてないし。仕事の電話しなきゃいけなかったのに」
コットンに化粧水を含ませている。口調のわりに穏やかな顔をしていた。肌もほんのり光って見える。
「仕方ないじゃない」と、僕は言った。
「だって、縛られていたんだから」
 麻子はパックを広げる手を止めて、「そうよね」と呟いた。
「縛られてたんだもの。仕方ないわよね」
 そう言うと、顎をひいてちょっと睨むような仕草をした。悪くない顔だと思った。(p.154)

結局、マンネリ夫婦が旅行先でいつもと違うプレイで絆を再確認してリフレッシュ、という取るに足らないお話でした。文字通り「縛られる」ことによって、それまで強く出てこなかった夫にもじつは妻を「束縛する」ような執着を感じて安心した、というのが妻視点での結論。縛る、ということばがあまりに直接的すぎるのと、他には「縛る」ことにまつわる素材がみられないことから、メタフォリカルな作品というよりは、普通の夫婦の通俗的なやりとりを駄洒落のようにしたてた作品、といったほうが適切でしょう。
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