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藤崎和男「負けて悔いあり我が闘争」

出典:『群像』2013年4月号
評価:★★★☆☆

笑ってしまった作品には評価が甘くなってしまうなあ、と自覚しました。まずタイトルで「負けて悔いあり」って、「あるのかよ(笑)!!」とツッコミを入れてしまいましたし、読みはじめてすぐに

しかし文学部校舎の入口でピケをはっている学生三人は、(後略―引用者)(p.166)

「ピケ(笑)!!!」と、現代の大学のことだと思って読み進めていただけに意表をつかれてまた吹き出しました。ここからさらに日米安保条約をめぐる押し問答になだれこんでいきます。そして、「彼」の就職、ふられた女の話、労働組合加入をめぐる会社側との裁判、辞職、経済的に苦しい家族生活へと、するすると話がうつっていきます。書き手の実体験もけっこう織り込まれているんだろうなと思える、学生運動をはじめ時代の空気を反映した素材が並んでいて、要所要所でクスリとさせられる笑いがはいっていました。にしても、結構上下の激しい「彼」の半生ですが、その激しさは笑いで中和されてしまって、それが作品にとっていいのかわるいのかにわかには判断しかねますね。

出来事を堅めの口調で淡々と語っていくスタイルは、どことなく杉浦明平を思い出しました。ただ、それよりも狙って笑える要素を入れています。このあたりが評価の分かれるところで、笑いの要素といっても爆笑というものではないし、わざとらしいといえばわざとらしさも感じられるので、苦手な人もいるかと思います。

高校時代バレーボール選手だった妻にはり倒される話なんかは、書き手としては楽しそうに筆を運んでいるのだけれど、

バレーボール選手の身体は、彼が考えている以上に鍛えられていた。(p.174)

といわれても、「そもそも何十年も前にバレーボールをやっていたにすぎないんだからいまさらそれがはり倒される理由になるのか」と真面目に醒めたツッコミをいれてしまいました。そんなこと承知で狙ってやってるんだ、ともしいわれればそれはそうですねと認めたうえで、ここは僕には悪乗りしすぎに思えて笑えなかったと答えるよりほかありません。

あと20代前半の読み手であれば、そもそもこの「彼」が生きてきた時代について、ほとんど知識ないんじゃないかな。左翼?セクト?オルグ?赤軍?なにそれおいしいの?みたいな。

読み手の前提する知識と、読み手の波長にはまればすごく楽しく読まれる作品だろうと思います。50代以上の読者必読、ですかね。
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