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小山内恵美子「空想家族」

出典:『文學界』2013年7月号
評価:★★☆☆☆

読みどころはどこでしょうか。結婚適齢期の女性、琴子が双子の姉の雛子(こちらは既婚)から子供を預かることになります。五歳の男の子、陸に振り回されながらも心地よい疲労を感じて、知人の70代の女性ミチ子や、琴子のつき合っている啓介も陸の遊び相手になりながら、「家族ができたらこんな感じになるのかなあ」と琴子が想像する、疑似家族もの。家族という作品の、これまた腐るほどたくさんある結婚適齢期女性もののなかにあって、この作品がなにか抜きんでているとか変わっていると思えるところは見当たりません。

話全体がごく穏当な常識の枠をはみ出ない通俗ものに落ち着いてしまっているのも、不満。一般論としていえば、通俗もの=悪い、とは全くおもいません(そういう作品を必要としている読者のほうがむしろ多いですもんね)が、その一方で、僕個人がわざわざ純文学雑誌を読むのは、世間一般の常識を再確認して安心したいがためではありません。もっと僕の価値観とか考え方を揺るがしてほしい、気づきを促してほしい、場合によっては叩きのめしてほしい、そういう希望があるからです。その点本作は、僕の期待には全く答えられません。

通俗ものであっても、たとえば描写が変わっているとか、比喩表現が独特であるとか、語りの仕掛けにひと工夫あるとかなら、読んで楽しめるものになりえる可能性は十分ですが、本作はそういうところもなく、すごくストレート、すごくまっとう、わるくいえばすごく月並み、すごくつまんない。

読み手の僕が男性目線でこの作品を読むから存分に味わえないのかもしれません。結婚適齢期の、あるいは子供をもとうかどうか悩んでいるような働く女性の読者なら、本作の内容にも共感できるのかなあ。

次の引用は、陸とおふろをつかう最中、琴子がめぐらす想像。僕にも、唯一おもしろげな雰囲気を読み取れた場面でした。

 浴槽のお湯が波打つ、あふれた水が排水口へと流れてゆく。
 かすかな息、シャンプーの匂いにまじるかすかな甘い香り、湯気のなかでふたりの輪郭がにじんでいく……。血液がさかんにめぐりはじめ、無数の毛穴がゆるみ、皮膚がゆるんでいく。水はたぷたぷ揺れる。固い蕾がゆっくりと開き、わたしたちはひとつのかたまりになる……陸のからだは縮み、生まれたばかりの赤黒くて皺だらけの姿で泣き声をあげ、いつしかわたしのおなかにすっぽり包まれ、羊水に浮かびながらとくとくと脈打ち、足をばたつかせておなかの内側をキックする。臨月のおなかは、はちきれんばかりだ。わたしはついにひとつの命の源流となる、そう、母になるのだ。雛子をすぐ近くに感じて太ももの秘密のしるしに触れようとすると、すでに陸の手のひらが置かれている。(p.154)

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