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中山智幸「リボルバー8」

出典:『文學界』2011年10月号
評価:★★☆☆☆

年末で本の整理なんかもしているので売るか押入れの奥にしまうかする前に読み残しているものにはざっと目を通しておこう二作品目。

語り手が通勤用自転車を盗まれ腹立ち紛れに街中に止めてある自転車を破壊していたところ、JK(自転車共壊)という自転車破壊行為を行う集団のメンバーに勧誘されます。

「きょうかいの”きょう”は共同の”きょう”、”かい”は破壊の”かい”です。ぼくたちは地球環境の回復と人間力への回帰を目的を自転車と共に壊す一派です。ぼくが発起人であり、リーダーです。こっちがゴモク、あなたをお連れしたこいつがスポンジ。外の世界で関係をリセットするため、主にニックネームで呼びあっています」(p.57)

このリーダーを名乗る男性は三十四才だとあとで分かります。この中二病台詞、しょうもない組織、三十四にもなって何やってるんだと白けたのが第一印象。会の説明はこんな感じ。

破壊された自転車を見せつけるのが肝心だと我々は考えます。破壊された自転車の像を、心身の内側に移植してやるんです。(p.58)

この男は三十四才です。

ぼくたちはそれなりの装備をもって破壊に臨む。見るも無惨な形にまで自転車を変容させる。徹底的に損なわれた、取り返しのつかないことなのだと持ち主に見せつけ、自転車という言葉から連想される姿をまったく別物に置き換える。もう二度と自転車など買わないと、深く決意させなくてはいけません。そうすることで、怠惰な意識を更地に立たせるんです。まっさらなところから、なによりもまず自分自身でやっていくのだと、決意を促すんです。(p.58)

この男は三十四才です。

まだわかりませんか? 信念ですよ。安易に自転車を使う人間の目を覚まさせるんです。(p.59)

繰り返します。三十四才、男。

自転車のタイヤと同じで、世の人間は二分されます、ペダルからの力をダイレクトに受けて推進力となる後輪と、その力を借りてさも自分で動いていると思い込む前輪とに。自ら前進してると思っていても、前輪は動かされてるだけです。本当の運動は、意識の背後で行われている。

もうくりかえしますまい(笑)。後輪だってペダルを踏む足で動かされてるじゃないかとか、そもそもこの言葉を語っている人間が自転車の後輪側の人間だと自認しているとしても、後輪側の人間が自転車を破壊する集団の構成員であるとはまるで意味が分かりません。語り手をアジトに招き入れ、ツラを見せ、どういう信念をもって、どんな手段で自転車を破壊するのかペラペラとしゃべったあとでなんと

 するとリーダーは態度を硬化させて告げた。
「あなたを迎え入れるわけにはいきません」(p.61)

これはひどい(笑)。このリーダー(34)は、わけのわからない自己流哲学をひとしきり披露して語り手を帰します。逮捕されるリスクがぐんと上がるわけですがその可能性にすら思いいたらない男(34)がリーダーの集団。馬鹿なの?こんなわけのわからない団体も、描き方によってはナンセンスな面白さがでたり不穏な不気味さがあったりするんでしょうが、このリーダーやメンバーが会の詳細について語れば語るほど「しょうもな」という印象が強まって行きました。しかも語り手は入会しない。

で、自転車を失った語り手は通勤ルートに徒歩を加えて健康体になります。奥さんも料理に気合をいれるようになり夫婦仲も円満でめでたしめでたし……ではなくて、語り手の心の隅にずっとJKの存在が引っかかり続けます。そしてある日、空気入れを購入し、街中の自転車に空気を入れて回る。この行動の必然性がまったくわかりません。そして最後、夫婦喧嘩をした後の午前二時、ひとり起き出した妻は自転車をハンマーで殴る音が「かん。/かん。/かん。(p.88)」と響きます。二時、ハンマー、自転車を殴る女、という道具立ては丑の刻参りのつもりなんでしょうけれどもう無理やりすぎてついていけませんでした。

終始そんなわけないだろの連続で、ついていけなかった作品でした。ライトノベル風味ならこの程度のリアリティでも問題ないとは思うんですが。掲載紙まちがえてませんか?
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