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牧田真有子「予言残像」

出典:『群像』2010年6月号
評価:★★★☆☆

自分が人を殺すイメージにとらわれる更科めいという女の話と、「おまえは更科めいに殺される」と予言して失踪した兄をもつめいの同級生の堤朱泉という女の話とが並走。あらかじめ定められた運命を人はかえられるか、みたいな古典的なテーマを根底にもっている小説として読みました。朱泉の兄の予言も、これまでは100発100中なのできっと今度も当たるんだろうなと朱泉は思うわけですが、それに更科めいは全力で逆らうという流れ。

『糸杉が十一本』というキーワードをうまく展開して、ラストになだれ込んでゆくところは迫力ありました。予言にさからうのか、それとも予言どおりになるのか、あちらをたてればこちらがたたずという状況のなかでうまく糸杉が十一本のモチーフを嵌めこんで、朱泉とめいとが部屋でやり取りするシーンの緊張感はものすごく高かったです。

分からないところが一点、失敗じゃなかろうかと思うところが一点。

わからないというのは、朱泉の兄の恋人で、かつめいの従妹である末森遥の自殺の動機。遥も朱泉の兄に「死ぬ」と予言されてそれに逆らうためにあえて予言された現場に赴き生還するという挑戦を試みるわけだけれども結局自殺してしまう。その自殺の動機が、よく分かりません。朱泉は、「宿命はあるんだという証」に遥がなる(=予言を体現して宿命を完成させる)誘惑に引かれた説を提示するもののなんかしっくりきません。遥がそんなことに引かれる伏線なかったはずですし。むしろその説は朱泉の考えに非常に近いもののように思います。遥の死には結局無理矢理感が残りました。

失敗しているのはめいが「国の最高学府へ入れる学力を疾うに備えながらあえて二浪もしている」という設定。とくにこの設定が生かされるようなシチュエーションやエピソードって出てきませんでした。ということは他の設定でもOKだったわけで。なんだか面白そうな設定ではあるのでこれをもっと生かせればなあと、もったいない気もしました。あと、最高学府に入れそうな実力をもつ人間が単語帳でanonymous程度の単語を復習しているのはちょっとなあという感じ。最高学府はそんな甘っちょろくありません。

全体的にこなれない表現が散見されました。人物にそぐわない言葉遣い(無理矢理カタカナ語を使っているとか、普段つかわない表現を使う)とか、漢字にしなくていいようなところも漢字にしちゃうとか(たとえば「疾うに」)、漢語調のことばが急にまじってくるとか(「兄になされた最後の予言(p.232)」)、具体的なイメージが展開しにくいポエム調の表現とか。こういう細かいところが気になったもののストーリーがそれなりに楽しめたので星三つ。
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