スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

大鋸一正「O介」

出典:『文藝』2012年秋号
評価:★★★★☆

O介と呼ばれる赤ちゃん(のち少し成長して幼児、小学校入学)に語りかける声の小説。読み進めてゆくと、この声の主がO介の肉親(ただし直接の父母ではない)で、かつすでに死んでいるということが分かる仕掛け。ポークソテーがきついという記述もあったし老人、ということは祖父か祖母かなと予想しつつ読みました。

父母じゃないので当然O介と密着して暮らすわけにはいかず、O介本人の代わりに新生児を識別するIDタグにみせる執着にはじまり、その後O介の食べるものや、死ぬ間際の記憶(どうやら電車に轢かれた模様)、学校の教科書のことなんかも語られ、一つひとつにO介とその周りのものに対する愛情を感じました。死後なおO介を気にかけ、O介のまわりにまるで空気のようにただよう声(もちろんO介には届いてない)。

わたしは今でも、そこに自分の指を通して、おまえの手首、あるいは足首の細かったことを思い返します。今や大きくなってしまい、こんなにも手足の細かったおまえはもういないのだと、噛みしめます。そうして、おまえの代わりに、指の二本を通して、乾いたリングを慰めるのです。


紋切型の、雲の上から下界を見下ろしていつまでも見守っているというようなイメージではなく、一貫して声が語りかけるふわふわ感が新鮮でした。合間合間ではさまれる、「O介」という語りかけも、もう触れられない故のせめてもの声かけ。たべちゃいたいくらい可愛い孫(?)と同一化したいという欲求は当然生きているうちにはかなえられず、死後こうした形でかなえられてしまうことももしかしたらあるのかなと思わせるリアリティがありました。また個人的なことでいうと、お盆にこういう小説を読むと、死んだ祖父のことも考えてしまいました。

秀逸な短編でした。
スポンサーサイト

コメント

Secret

プロフィール

読む人

Author:読む人
小説の感想を、自分基準で。コメントはご自由にどうぞ。

★☆☆☆☆(面白くない)
~★★★★★(面白い)で評価。

最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。