スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

鶴川健吉「乾燥腕」

出典:『文學界』2010年6月号
評価:★★★☆☆

嫌悪感をもよおす小動物、虫、排泄物が散りばめられたどうしようもない小説です(笑)。吉村萬壱作品にもこういったモチーフが散りばめられていますが、本作との違いをあげるなら、本作のほうが気持ち悪さと同時にユーモア(時に失笑)が漂っています。吉村作品は嫌悪感をぐいぐいかきたてられて目をそむけてしまうのにたいし、こちらは気持ち悪いのは気持ち悪いのだけれどもにやつきながら読んでしまう。

第110回文學界新人賞受賞作で選評もついています。選者は角田光代、花村萬月、松浦寿輝、松浦理英子、吉田修一。数名の選者が指摘している通りポンポン視点が切り替わるところが読んでいて楽しい。視点の自由な切り替えという手法自体は例えばウルフの『ダロウェイ夫人』をあげるまでもなく1世紀も前からやりつくされてきた手法ですが、それでもなお本作の目新しさをあげるなら切り替わる視点がことごとく嫌われ者ばかり(蝿、鼠、ダニなど)というところでしょうか。こうした嫌われ者と視点の上では同等に扱われることで、主人公の後宮という男性のどうしようもなさ、卑小感も際立ちます。風俗嬢にすら罵倒され鼠にも馬鹿にされ、もうとことんどん詰まり(笑)

マン毛が空を舞った。
チン毛が床を滑った。(p.43)

この脱力感(笑)。風俗嬢との絡みがあっただろうシーンをこの2行で実現させてしまうのは恐るべきセンスですね。古くは、「つとめて(=翌朝)」で情事を暗示した濡れ場ですが現代ではこんなしょうもない(褒め言葉)表現の仕方があったのかと膝を打ちました。

物足りなさというかないものねだりをするなら、圧倒的に広い世界を一方で対置すれば、主人公はじめミクロ世界にうごめく虫や小動物たちの卑小感もより際立ったんだろうなと思います。
スポンサーサイト

コメント

Secret

プロフィール

読む人

Author:読む人
小説の感想を、自分基準で。コメントはご自由にどうぞ。

★☆☆☆☆(面白くない)
~★★★★★(面白い)で評価。

最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。