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乾くるみ「Jの神話」

出典:乾くるみ『Jの神話』(文藝春秋・文春文庫・2008年)
評価:★★☆☆☆

やばい、ブログ放置してしまう。読むのは毎日読んでいるものの書くのがついおざなりになりがち。

乾くるみのデビュー作だそうです。喜多ふありもそうですが下の名前がふわっとした平仮名だと女性と勘違いしてしまいそうです。乾くるみも男なり。むくつけき男なり。

女学生小説の系譜にも連なるのでしょうね。古くは三宅花圃『藪の鶯』小杉天外『魔風恋風』吉屋信子『花物語』あたりにはじまって太宰治『女生徒』橋下治『桃尻娘』、作品解説にも挙げられていた綾辻行人『緋色の囁き』、未読ですが「マリみて」、ケータイ小説とかにいたるまで連綿と書き綴られてきた女学生。女学生がテーマじゃないものの頻繁に登場してくるものもふくめれば相当たくさんあるでしょう、そんな系譜に連なって世紀の変わる前に登場したのが「Jの神話」。

さて、本作は解説によると乾くるみのデビュー作(メフィスト賞受賞)。メフィスト賞出身の作家で現在大活躍している作家は枚挙にいとまがないほどの注目賞、そんな作家の列につらなる乾くるみ。『イニシエーション・ラブ』が出世作で大ヒットしていてこっちのイメージが私も強かったぶん、この作品を読んでみるとテイストがかなり異なり(特に後半)面食らいました。テイストが異なるとはいえ、文庫版解説の円堂都司昭によれば、本格ミステリの枠に収まらないジャンル越境志向がある点では共通しており、また乾の他作品に共通して見られる「望まれぬ妊娠」のモチーフや、ミステリ的趣向なんかもまたこの作品中でも描かれています。

いろいろごった煮の感が強くて、そこがメフィスト賞の「面白ければなんでもいい」という講談社精神と合致したような気がします。面白ければためにならなくてもいいのかな(笑)

さて本作ではしかし、奇想があるものの非常に強引な点、うまく回収できていない伏線があって素直には楽しめませんでした。

ジャックとは何か、がこの作品の重要なキーになるんですが、遺伝生物学的な意匠はこらしているものの「そんなばかな」という説明でジャックの存在がネタ晴らしされるところは特に納得いきませんでした。もちろん小説(=フィクション)なんだから、魔法使いが出てきたり、超自然的な力がでてきたり、動物が喋ったり、設定としてどんな仕掛けを取り入れてもそれでいいはずですが、この作品のジャックの説明には納得いかず。物語のフレームとしてリアリスティックな女子高校を舞台にしておりそこから大きく逸脱してしまったため、後半はもう流し読みでした。小説の世界内での合理性がないですね、これは。

回収できてない伏線でいえば、カトリックの少女が自殺するはずないという記述が複数個所あったにもかかわらず、結局こじつけで自殺として片づけてしまったことに不満を覚えました。また、人間を扼殺するには女性の力では不可能と語っておきながら、けっきょく女性の扼殺が何度か出てくること(ジャックのせいで説明しちゃうのでご都合主義もいいところです)。

また、人物造形も非常につくりものチックでわざとらしい。へたくそな男性ラノベ作家のものとあまりかわりません。出てきた登場人物のうち、女学生たちの描き分けがどれほどできていたでしょうか。それぞれ別の人物として認識できるほどの個性が描かれていないにもかかわらず、おのおの固有名が出てきて記号だけが突出するのはたんなるへたくそなんじゃないかなあ。

まとめると、ストーリーにしろ人物にしろ、かなりご都合主義に使われたきらいがあり、そのために作品内のリアリティも不足しちゃってると思います。「そんなばかな」の連続では、読んでて作品世界に入りこめません。「そんなばかな」を確信犯としてやってしまうのならそれはそれでありでしょうけど(赤塚不二夫とか)。
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