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中森明夫「アナーキー・イン・ザ・JP」

出典:『新潮』2010年5月号
評価:★★☆☆☆

現代のパンクかぶれの高校生の身体に大杉栄の精神がよみがえる。着想は高橋源一郎の『日本文学盛衰史』をだれもが思い浮かべるはず。「アナーキーをキーワードにパンクロッカーとアナキスト大杉栄とを結びつけてみた」という作品だったわけですが、面白かったか否か。私はあまり楽しめませんでした。

ひとつはかなり内向きな言葉で語られていたということ。例えばパンクバンドの名称が「百円ロッカー・ベイビーズ」とか「風花暴力バーズ」とか誰向きの言葉でしょうか。あるいは、

オレは……死んだ。(p.155)

と書いちゃうところなんかは、女子高生向きのケータイ小説を揶揄したコピペを思い出しました。

アタシは死んだ。スイーツ(笑)

というやつですね。

多くの社会主義者やアナキストの名前が列挙されていて、クライマックスでは古今東西の大物が入り乱れてのライブシーンとなります。が、大杉栄と伊藤野枝以外は、事典の人物紹介以上の精彩を欠いていたように思います。いうなれば事典そのまま引き写し。大杉栄の切られ役として無理矢理登場させられた気もしますし、なんというかこれも大杉栄に対する思い入れみたいなものはあるのだろうけれど、フェアじゃないなと思いました。

文章も基本的にへたくそで、へたくそというのはそれ自体がアナーキーでいいじゃないかという言い方も一方ではできるかもしれませんが決してそうは思えません。

……りんこりんだ。(引用者注:りんこりん=語り手の憧れのアイドル)全裸だった。タバコを吸っている。青白い煙が浮かんでは消えていた。彼女の裸体が白くまぶしい。長い黒髪が肩にかかっている。豊かな胸が陰影を作っている。ほっそりとした腕。くびれた腰。真っ平らの腹部。ヘソの窪み。二本の細い脚がすんなりと伸びている。そのつけ根あたりに無防備なアンダーヘアーが見える。無表情だ。うつろな瞳。どこか遠くを見ている。けだるげで、なんだか放心しているみたいで。まるで投げ出された裸の人形のよう。それが時折、タバコを口にやると、そっと煙を吹かしている。窓から射し込む淡い光に、その姿が薄青く映えている。(p.135)

どうでしょうこれ。身体の各部位に凡庸な形容詞をつけて体言止めで順番に言及。何の順番かといえばおそらく視線の動きに沿っての順番でしょうがしかし、臍→脚というふうに一度局部を迂回してから、「アンダーヘアー」に視線を戻す。凡庸な形容詞は作家の、というより語り手(高校生)のといってしまえば凡庸な形容詞でもまあOKでしょうけれど、じゃあ男子高校生が憧れのアイドルを目の前にしてなんで局部を一度迂回するのかあまり理解できません。むしろそこばっかり凝視しちゃうんちゃうかな。この辺に書き手の甘さが露呈します。さらには、彼女の裸を「白くまぶしい」といっておいたその口で、「その姿が薄青く映えている」。白くてまぶしかったんちゃうんかい。この辺も甘すぎる。書くことにたいして非情に無防備で、技術もないのかなと思ってしまいます。

昔の作家みたいに文章修業をしろ、みたいな堅苦しいことは言いませんがそれでも無手勝流に書き連ねるだけでは何も生まれない。小学生や中学生がだらだら書いた文章とほとんどかわらない非常に貧しい表現には、貧しい思想しか備わらない(すくなくともそのようにしか思えない)ことがよく分かります。

結局、高橋源一郎の二番煎じで、文章をへたくそにした感じ。たくさん文献を参照したわりに未消化な部分も目立つ。内向き言葉で通じる人に通じればいいというのは非常に幼稚なスタンスで、これのどこがアナーキーかと思いました。
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