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木村友祐「天空の絵描きたち」

出典:『文學界』2012年10月号
評価:★★★☆☆

基本に忠実でいい小説でした。ビルの窓ふきを受注している会社の社員たちの小説です。展開はある程度読めてしまう部分があるものの(危険な現場で作業する人たち、頼りになる先輩、今度映画いこう、とくれば先輩死亡フラグたつでしょう、そりゃ)、人物や仕事状況の描写が丁寧なのでそれほどわざとらしさは鼻につきませんでした。ワルモノにも共感できる面があったり、イイモノにも下卑た部分があったり、登場人物が結構いながらそれぞれ多面的な側面が描かれていたのも読んでいて、ああこういう人いるいるという感じでリアリティがありました。

窓ふきの描写一つとっても、単なる説明とは違った、やりがいのある仕事だなということが伝わってきます。

ほかのみんなにくらべて一際大きい権田の背中が、腰を中心にして左右に振られる。どこにもムダのない、なめらかな動き。窓に塗られた水が、まるで折り紙でも折るように、きれいにひとつにまとめられていく。その奥から、つやつやと洗いたての窓が現れる。(p.108)


最後の場面も言葉の選び方が良かったです。権田さんことクマさんが落下事故で死んでから、その弔いのようにクマさんの拭きのこした窓を同僚たちが拭きはじめる場面。

「大丈夫。あのやさいいクマさんが、見守ってくれてますよ」
 その言葉でからだのこわばりがほうっとほどけていく感じがした。小さくうなずき、息をゆっくり吐いて、彼女はもう一度、左右の手のなかのロープをにぎり直す。そう、今までどおりに。習った手順どおりに。あの焼き鳥屋で権田が見せた、ヒゲ面のおっきい笑顔が思い浮かんだ。心のなかで彼女は、見ててください、と語りかける。(p.156)

言葉の選び方としては、「ほどける」というチョイスがいいですね。このラストにくるまで一本のロープが人の安全をつなぎ止めたり、逆に奪ったりしてきた、そういう描写を積み重ねておいての、こころが「ほどける」はなかなか味わいある表現だなと思いました。たくさんの人に読まれるといいな、と思える小説でした。

あとあんま関係ないですがまわりから「おしゃべりクソヤロー」とよばれている苅田さん。これはアメトークの有吉が品川祐につけたあだ名が元ネタでしょうか(笑)
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