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三木卓「K」

出典:『群像』2012年2月号
評価:★★☆☆☆

三木卓という人を詳しく知りません。そこで調べてみるとたくさんの受賞歴がありました。

 1973年「鶸」で芥川賞受賞
 1984年児童文学『ぽたぽた』で野間児童文芸賞
 1986年小説『馭者の秋』で平林たい子文学賞
 1989年小説『小噺集』で芸術選奨文部大臣賞
 1997年児童文学『イヌのヒロシ』で路傍の石文学賞
 1997年小説『路地』で谷崎潤一郎賞
 2000年小説『裸足と貝殻』で読売文学賞
 2006年『北原白秋』で毎日芸術賞・藤村記念歴程賞・蓮如賞

 1999年紫綬褒章受賞
 2007年日本芸術院賞・恩賜賞を受賞
 2011年旭日中綬章を叙勲

芥川賞とった人のなかに名前あったなあ、程度の記憶しかなかったので思いのほかもろもろの賞をとっていてびっくりしました。大家といっていい作家なんだろうけれど私にとっては、「見なかったことにしてスルーしてきた作家」さんだと思うので読んでみました。「K」。

癌で死んだ妻のKと、いついつ出会って、どういう経緯で仲良くなって、けんかして、別居して、相手の思いはこうで自分はそのときこう思った、という夫婦のなれそめから別れまでがずらっと書かれてあります。私小説といっていいんだろう本作は、しかし読後なんの感想も思い浮かばない。

私小説を読むときには、①覗き見根性というか「ええ!あの人ってこんなこと思ってたの!?」というような気持ち悪さとか情なさ、思っても見ない裏側をみちゃった驚きを楽しむ、そしてそのあとにくる、②ああ自分もこんなところあるよなあというしみじみ感を味わう、のが私のいつもの読み方です。

なのだけれど本作の場合、まず三木卓という書き手になんの思い入れも事前情報もなかったので、ゴシップ的な覗き見根性が全く刺激されなかったのと(よって①は×)、僕には妻もいなければ当然その人との別れも経験してないので「自分にもこういうところってあるよな」感も全く抱けなかった(②も×)。結局読後残ったのは、他人どうしのなれそめと葛藤と別れを、特に興味もなく我慢して読んだというむなしさのみ(笑)

言語的な仕掛けや、構成・プロットで凝っているわけでもないので単なる回想を読んだだけだったです。本作を読んで楽しみやすいのは、三木卓ファンや作家事情に通じた人(ええ!?あの三木卓がこんなこと思ってたの!?)、あるいはある程度の年数夫婦生活の酸いも甘いもを経験した人(あるある!こういう風に妻/夫に対して抱く感情ってあるよ!)、なんだろうな。僕みたいな人間にはいまいち向いてない作品でした。

結論。私小説を読むにはある程度書き手周辺の事情に通じてないと、もしくは書き手と近い境遇でないと、あんま楽しめない。ということを確認しただけのようにも思うけれどしかし、更に考えをすすめると、全く知らない人かつ、全く近い境遇じゃない人の私小説であっても、ぶっ飛んだ体験談とか現実にはありえないだろう!というような事件が描かれていればそれはきっと楽しく読めるだろうな(もはや私小説は関係ない地点だけれども)。

追記。平田俊子による「K」評
要約すると、いつもニコニコして満ち足りているように見えた先輩詩人の三木さんが、実は妻との間にゴタゴタがあったことを知り衝撃を受けた。というもの。『東京環七』という詩の紹介や高村光太郎・智恵子夫婦の話も出てくるけれど切り詰めるとこんな感じ。やっぱり、Kの人となりを知っていて初めて、その本を読んでうける衝撃も変わってくるのだな。読み手に見えていた人物と私小説の中で描かれる人物との落差=インパクト。
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