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石川淳「紫苑物語」

出典:石川淳『紫苑物語』(講談社・講談社文芸文庫・1989年)
評価:★★★☆☆

僕が何度も立ちかえる作家のうちの一人石川淳。小説を読んだときに、石川淳印といってもいいような独特の言葉はこびが再読するつど思考を刺激してくれる気がします。表題作「紫苑物語」は石川淳の小説にはいるときに一番いいんじゃないかなと思う作品です。一言でいうなら弓をモチーフにしたアレゴリカル(諷喩的)物語。

対立物をぶつけて弁証法的にさらに高い次元で対決させて、という話の運び方は多分に図式的です。悪い意味で図式的というんではなく、作品の構造がかなりあけすけに見てとれるだけに、その構造をつかって他のものを考えるときに役立てることができる、応用力のある図式。本作では、歌と弓、いいかえると知力と武力とがまず対決し、その対立が解消した後に、弓と宗教、言いかえると武力と霊力とが対決します。知力、武力、霊力というのは古代から支配者が被支配者をコントロールするうえで独占しようとしてきた力です。その対決であるわけで、時代をずらしても十分通じる話ですね。天皇制でもいいし、『至福千年』に描かれた江戸時代でもいいし、現代の国際政治にも使える図式です。

再読してみて、なかなか面白い箇所があったので引用しておきます。やられ役臭がプンプンする小役人の藤内をさげすむセリフ。

笑止のきわみながら、藤内はうまれついて陽根のあわれにも小さく、しかも皮かぶりにて、ひとなみの役にはたちかねるものなれば、当人もみずからふかく恥じて、これはひとには見せもせず語りもせぬことでございます。まして、このちび筆をもって、ほかならぬ姫のお相手に、恋の手習いがかないましょうか。(p.64)

下ネタについつい魅かれてしまうのは僕の個人的な趣味かもしれませんが、下ネタいうにしてもこれくらい気の利いた言葉で語れる知性が欲しいです。これは紫苑物語中屈指の名台詞。

他にもさりげない描写に光る名人芸、メタファーの使い方、動作動詞はじめ語彙の豊かさ。いちいち例は取り上げないですが再読するたびに感心する表現があるのはいい作品である証拠ですね。
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