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松井雪子「森の靴音」

出典:『群像』2009年7月号
評価:★★★☆☆

女子高生数人組の話がアニメでもラノベでも大量生産された(されている)印象がありますが、本作はそんな女子高生その後の話を、折にふれて過去に立ち返りながら展開する話。最初から全体像を見せずに、いくつかの謎のワードを布石としておいておいて(フィーバー、神代桜、みすず…)、話が進むにつれて一つひとつがどのような意味をもっていたのかが明らかになる、その段々景色が見えてくる構成の仕方がうまかったです。最初っからさっぱりわけわからない世界を遠慮なくどかどか展開するでもなく、既視感ありありのお話しを出してくるでもなく。ちゃんと読者のことを考えた構成で好感がもてました。

二百と十歩目が踏まれるたびに、みすずの悲鳴が聞こえるような気がして遥は息をのんだ。ある女のピンヒールがタイルの上を通過したときにはきりりと差し込んでくる圧痛に耐え、ある幼女のサンダルが笛を鳴らしながら駆けぬけたときにはけたたましさに耳を塞ぎ、ある男のスニーカーに踏みつけられたときには靴底にうねるラインをはっきりと読み取ったような気がした。ベビーカーを押した男が立ち止まり、子供を覗き込みながら押しては戻しを繰り返し、車輪に躙られる様を見るうちに、脇腹の肉が捻られるような痛みを覚え、背を向けた。(p.56)

最後まで読めばこの冒頭がいかに効果的で練られたものかがわかります。丁寧な出だし。

恐らく高校時代、クラスの中では地味な3人組として周囲からは認識されていたであろう元女子高生たちの、短い期間ながら濃密な時間、絆、それを思い出にして今につなげて生きるというのはぐっときました。外からみたらぜんぜんぱっとしないのだけれど、本人たちにとってはかけがえのない経験でつながっているお互いに大事な友人だという、その個人的なところを巧く掬っていたと思います。とくに絆を描く上で、3人で共同作業してしあげた物語はそれだけで一つの読み物としても読んでみたい作品でした。

もうちょっとだなあと思うところ。人の描き分けでしょうか。みすず以外の二人、尚子と遥の高校生時代はどっちがどっちでもいいような、別々の人として認識できない描き方だったように思います。僕の読解力がなかっただけならすみません。あと、最後の最後で、思い出の場所でワゴンセールをやるとそこだけ商品がバンバンうれる、みたいなのはちょっと蛇足かなあと思いました。
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