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間宮緑「電気室のフラマリオン」

出典:『群像』2009年5月号
評価:★★☆☆☆

フラマリオンとよばれるモノ(人形なのか人造人間なのかクローンのようなものなのか)の対話で描かれる世界。言葉づかいが独特でそこに魅力がある一方、具体的なイメージとしてフラマリオンの動きなり、周囲のものの配置なりがつかみづらく描写力が今一つに感じました。さらに短編という分量にはとうていそぐわないような世界観が背景にあるっぽいのでそれが輪をかけて本作を分かりづらくしています。もっと長い分量のものを読めば、この書き手の評価は変るかもとおもわせるキラッと光るものを感じました。

このままでは、まだ読み手のことを考えられない(=ひとりよがりの)駆け出しの書き手。ただし小説家ならだれしも独りよがりなところを持っていないと何も書けないでしょう。そして、この短編から垣間見えるこの作家のひとりよがりの部分には、なんだか別の世界に読者を連れ去ってくれそうなパワーを感じたのも事実です。

 彼の目はクローゼットに閉じ込められていた。
 そこには把手がなかった。防虫剤の臭いが漂っていた。見えない指を開ききり、関節でかぼそい息を乱しながら壁を探った。壁は硬質で、石のように冷たく、音を返さなかった。次第に狭くなる壁に掌を這わせながら、彼は当てもなくめちゃくちゃに指を走らせ、湧き始めた想像を振り払おうとした。突然の声、背後の影、この場所をねぐらにしている悪魔について……
 彼はスイッチを探した。指は知らぬ間に胸の中に入り込んでいた。血の感触がした。彼は息を止めた。出し抜けにスイッチを見つけた。骨の内側で、闇につぶされながら明りが点いた。
 古く、消耗しすぎて、明滅をやめなかった。
 翅をふるわせる仄白い発作の上を、彼は走っていた。体内には小径が食い拓き、拘束と決別とを繰り返し、暴走する蟻たちが足跡を遺して行った。電燈は海岸の火のように揺らめいていた。翅に火の点いた虫が口を開けて迫り、あらゆる明りを飲み込んだ。
『また夢をみていたんだね、フラマリオン』
 扉の向こうから、声が囁きかけてくる。
『気分はどうだい?』
 目を開けた。暗闇の中に彼は手をのばした。その手が見えなかった。動きのない影が拡がっているばかりだ。(p.165)

不可解な状況にはかわりありません。目がクローゼットに閉じ込められている状況とはどういうものなのか。目だけ分離されても意識はあるし身体を動かすことができる「彼」とは誰なのか。突然カットインする声の主は何者なのか。魅力的な冒頭部を引用しましたが、この、なにか期待させそうな世界観が、短編という分量にはそぐわないと思います。短編に合わせた見せ方(書き方)を身に着けるべきだったかもしれません。
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