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上村渉「群青の杯を掲げ」

出典:『文學界』2010年6月号
評価:★★☆☆☆
big ears


フリースクール出身の若い男二人、俊と大輔が、かつで自分たちの居場所だった建物のある場所を目指して歩いていく話です。人が死ぬこともないし大恋愛がおこることもない、かといって細部におもしろい目のつけどころがあるとか、新しい視覚が開ける話でもなく、なんというか読み終わって、「で?」と言いたくなる食い足りなさを感じました。

ありがちな言葉でまとめようとするなら、家族や職場の人間関係よりも一時を敏感な時期を一緒に過ごした人間こそ友人といえるのだ、とか、生きづらい社会の居場所がない中で自分たちをいつでも受け入れてくれる場所があることっていいよね、とか、いかにもそれっぽい言葉で語ることもできなくはないのだけれどそれも強く伝わってくるようには書かれていません。前者の友人関係の話でいえば、好きな女性のことについては二人の間で共有していなかったぽい(=ということは二人の中はお互いあけすけに通じ合う仲というわけではない)ですし、後者の居場所の話でいえば、そうはいっても大輔のほうは職場仲間や社長にも信頼されているようですし、俊の方も家族が心配してお金を出している(=ということはフリースクール以外にも居場所をつくろうとすればできる)ようです。こんな風に、すんなりまとめようとするとノイズが出て来ます。

二人の目指す御殿場という地名になにか意味があるようにも思えません。唐突に挿入される『クリスマス・キャロル』の話もこの小説全体とどういう関係にあるのかわかりにくい。二人が道中いろいろ会話をしますがそこで二人の関係が変化することもありません。タイトルにも入っている「群青の杯」であるビッグ・イヤーがこの二人にとってどういう意味をもっているのかも判然としません。結局、この小説に描かれていることはそのまま受け取ったとして、別に珍しくもなんともない男二人の雑談を読んだ、という感想以外は残りませんでした。フリースクールに実際に通ったことある人や関係者だとこれを読んで何か別の感想をもてるのかもしれませんが、僕にはあまり引っ掛かりののこらない作品でした。
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