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西村賢太「豚の鮮血」

出典:『文學界』2012年11月号
評価:★★★☆☆

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ブックオフにいっても100円では叩き売られていない西村賢太の人気の秘密は、いまだ記憶に残る「風俗行こうと思ってた」発言や、メディアでみせる「あいかわらずだなあ」という西村賢太節といった、その人物が多くの人を引きつけるところにあるんだろうと推測します。あと、映画化もされたしね。そういう人が私小説を書けばそりゃ面白くないわけがないですが、その面白さを書き手だけに還元してしまうのはもったいない話で、事実、この「豚の鮮血」は書き手のデータがない人にも楽しめる作品となっています。

この硬い調子は、藤澤清造経由のものなのでしょうか。藤澤作品は未読なので今度読んでみようと思いますが。言葉づかいは硬い調子です。文末は、「である」「である」連発するし、漢字も多い部類。だけどそこにしばらくつき合って読み進めていうけばそれほど苦にはなりませんでした。で、そういう硬い感じの基調低音をつくっておいて、そこにたまにさしはさまれるすっとぼけたカタカナ語がことごとく決まる。決まる、というのは読み手を笑わせることに成功している、という意味で。

多汗症のくせして根がデオドラント志向にできてる彼は、いったいに汗をかく行為が大嫌いなのである。(p.15)

彼は、根が人数倍のスタイリスト気質にもできているのである。(p.15)

デオドラント志向ってなんだよ(笑)。スタイリスト気質ってなんだよ(笑)。

体裁は私小説でネタ元も実際に西村賢太の身に起こったことなんだろうなと思いますが、作中の主人公を貫太とし、「彼」と呼びならわしていることからもわかるように、書き手と作中人物との距離はきっちり取られています。西村賢太のさすがだなあと思わされるテクニックは、やっぱりこの距離の取り方で、微妙に貫太を突き放すような(それでいて同時に抱きとめてもいるような)書き方で書かれることによって、批評的な視線が入る余地がうまれていますね。その、書き手と作中人物とに生まれた距離をうまく利用した一つが、上の引用箇所。

この調子でどんどん書いていってほしいですね。個人的には、貫太がいいともに出演したときのエピソードを待っていますが(笑)
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