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安部公房「天使」

出典:『新潮』2012年12月号
評価:★★☆☆☆

安部公房の出発点として新しく位置づけられるべき作品が発見されたそうで、それが12月号新潮に掲載されていました。安部公房の作品にはほとんど目を通していますが、後年の、具体的な記述身体的な記述を積み重ねて、抽象性へと至るような書き方とは違って、観念的哲学的な語り方をされた短編となっています。もっとも、部分部分では若書きながら魅かれる記述もたびたびで、未読の方は短い作品なので読んでみて損はないはず。

いま・ここから抜け出してゆく、超越的志向みたいなものは、語り手を精神病院に収容された狂人に設定していることからも顕著ですね。何をいっているのかわからないような書き方も、この語り手ならありかと納得できます。ただ、安手といえば安手ですが、時代が許してくれたってのもあるのかな。

以下、気になった表現など適当に抜粋。

それは私が一つの正確な世界に住んでいた、或る意味では、正六面体の宇宙に住んでいたと言う事の為に発見した真理、第一級の真理の事なのだ。御承知の通り無限を意味する灰色の六つの、いや五つ半の面と、半分の未来とに世界は仕切られている。お解りだろうか。実の所を言えば、私も始めはこれは唯の部屋だと思っていた。所があにはからんやである。これが宇宙そのものだったのだ。そして固い冷い壁だと思っていたものが、実は無限そのものであり、恐ろしい不快な鉄格子だと思っていたものが、実は未来の形象そのものに他ならなかった訳なのだ。(p.8)

何時しか其の不吉な花に誘われて、私は枝元から手折って顔をよせ、静かにその香を求めても見た。けれどその花は唯冷いばかりだった。目にも耳にも鼻にも答えようとはしなかった。私はそれを上衣のボタン穴に挿し、丁度心臓の上に其の炎が凍りついている様な具合にした。そうすると何んとした事だろう。私の胸は一そう晴れやかになり、一しおさえた青が雲を包み、太陽は葉群れや窓に金色になって笑った。(p.13)


全集に収められた安部公房作品すべてを読んできた僕にとっては、「安部公房の初期短編が発掘された」という売り文句がこの作品を最後まで読ませてくれたわけで、これが別の作家のものだとか、近年の若手によるものだったとしたら、最後までは読まず途中でやめちゃっただろうな。
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