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原田ひ香「こなこな」

出典:『文學界』2012年12月号
評価:★★★☆☆

愉快な人間関係を描くとか心温まる家族の絆とか、そういう甘ったるいフレーズをぶっ飛ばしてくれるのが純文学の面白さだとすれば(だから万人にうけないのかもしれないけれども)、それでも実際僕らが生活していくなかで、他人と通じ合えなかったり、腹立ったり、むかついたりすることはたくさんあるわけで、一言でまとめると、他人とのわかりあえなさ、を描いたのが本作品。一言でいう、なんて乱暴ですが。

この「こなこな」には様々な層で、やり取りの嚙みあわなさが設定されています。ご近所さんのレベルで、そのご近所さんから一週間預かることになった子供とメイドさんと桃代のレベルで、桃代夫婦のレベルで、桃代夫婦の過去の友人のレベルで。さまざまな国籍、さまざまな環境、さまざまな時間を生きてきた人たちが、作中ではたしかに言葉をかわしているし、メールなんかでもやりとりは成立しているけれども、それは表層であって、深層ではどうしようもないわかりあえなさ、他人の考えていることのつかみ辛さが底流しています。

だからこそ、その容易に分かりづらいところ、ときにちぐはぐになってしまうところに、コミュニケーションの面白さや物悲しさがにじみ出てくるわけで、上にあげたそれぞれのレベルでの人間関係がいっそう味わい深いものになっていると思いました。まあ倉田夫人の、そんなに交流もないご近所さんに子供とメイドを預けるという思考回路は読了後もまったく理解できませんが(笑)。

夫の浮気を仄めかされてもあえてそれを素通りしてしまう桃代のありようには、なるほどこういうのもありだな、と思わされました。桃代が意識的にそうしているのか無意識なのかは判然としないところがいい。恐らく、容姿は下り坂、年齢は三十路間近、学歴は高卒、シンガポールにいながら英語もしゃべれない、実家の援助も期待できるほどではない、となると夫と別れた時にとても一人では暮らしていけないだろうから、この浮気の可能性を表層でスルーしてしまうのは無意識の意識、みたいなものの発動でしょうか。

夜中に家を抜け出して粉を買いに行って、そのまま粉料理を作りまくるとか、どことなく不気味です。肉を買ってきて庖丁でメッタざしにする、みたいなありきたりの分かりやすさがうすめられているぶん、粉料理をつくることの意味あい衝撃度があいまい化されて、そこに読み手の想像力を誘う余地が生まれているなと思いました。
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