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横田徹「狙撃兵」

出典:『群像』2012年7月号
評価:★★★☆☆

「特集5篇のデビュー小説」のうちの一つです。奥付の著者紹介から引用すると、

横田徹【よこた・とおる】フォトジャーナリスト。71年生。『REBORN AFGANISTAN』共著に『外人部隊の日本兵』『SHOOT ON SIGHT 最前線の報道カメラマン』(共著)


この経歴が生かされたことが容易に推測される「狙撃兵」と題された短編は、傭兵としてアフガンに出兵した日本人狙撃兵の物語です。日本で暮らしている人にとって戦場はやっぱり遠いものです。この作品の狙撃兵の目を通して、戦場の緊張感とか、そこで働く様々な力学を体感できました。一人称を選ぶことが、この否応なく迫ってくる臨場感を勝ち取っています。

戦場とはいえ戦闘のルールにのっとって対応しなければならないこと。絵にかいたような敵ばかりではないということ。判断ミスが仲間や自分の命を一瞬で奪っていくこと。生々しさがはんぱない。戦争を、戦場や内地でじかに体験した世代が書き手としてどんどん亡くなっていくということは、その記憶を小説に書き留める人がいなくなることと同義ですが、かつて書かれてきた戦争もの、戦争小説を現代的に書き継ぐには、横田徹のような書き手はぜひとも必要だと思いました。

短編として限られた分量にもかかわらず、一瞬の緊張を現在と過去を交錯させてうまくまとめあげていると思います。とても新人とはおもえない構成力ですが、新人というのはあくまで小説書きという意味での新人であって、ジャーナリストとしてはかなり活動されてきたのかもしれず、とするならものを書くことには習熟しているのかもしれませんね。新人よばわりするのが失礼なのかな(笑)

戦場を肌で体感する書き手というのは、いまの文学界において貴重だとおもうのでこの方向でもっと長い作品を読んでみたいと思いました。たとえば実際の日本兵のインタビューや手記なんかも交えながら、現地の人の声もとりいれたりしながら。あるいは、伊藤計劃のような近未来SFな方向でも面白いかも知れないし、本作から読み取れる限りだと銃器の知識も豊富そうなのでハードボイルド小説みたいなものでもこの人なら書けそうだなあとおもいました。とにかく、いろいろ可能性を秘めた書き手の今後を楽しみにしています。
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