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久保田智子「息切れ」

出典:『群像』2012年7月号
評価:★★☆☆☆

先ほどとりあげた横田徹同様、「特集5篇のデビュー小説」の書き手のうちの一人です。

久保田智子【くぼた・ともこ】TBSアナウンサー。77年生。『日日猫猫』


やはりアナウンサーという経歴にからめた作品「息切れ」。大物政治家田貫洋二郎が党の代表選挙の演説に向かう直前、つき合ってきた女たちによって議員会館の自室に軟禁されてこらしめられるところを、妻に救われるという話です。一応小説としての体裁は整っていますが、この小説を読むことでなにか面白さ、新しさがあるかというと全くありませんでした。なんというか「小説らしいもの」にこだわりすぎている印象をうけました。

たとえば、過剰に「小説らしさ」にこだわるとこんな表現が出てきます。

テレビではいつものように大きな画面に映し出された地図の前で、大きな渦巻き模様を指差しながら、大きな身振りで女の子が一生懸命喋っているけど、今、私の小さな世界では、いっさいの微風すら吹いておらず、奇跡的でかつ奇妙な空気の均衡が保たれている。温度すら感じることの出来ない均衡を崩すまいと、私は目が覚めた後、しばらくは微動だに出来なかった。私のちょっとした挙動が全てのバランスを壊して、混乱を呼び起こすんじゃないかという小さい頃からの誇大妄想がよみがえって来た。(p.194)

「奇跡的でかつ奇妙な空気の均衡」といわれてもなんのことやらイメージできません。悪純文学くさい表現でげんなりします。「小さい頃からの誇大妄想」というのも冒頭のこの場面で言及されるだけで、この後の「私」の造形にはなんにも寄与していません。けっきょくここも「文学ぽい表現ってこんなもんですよね」という姿勢が透けて見えます。小さい頃からの誇大妄想って(笑)

こういう気負った姿勢がある一方で、描かれるメインの政治家軟禁&解放シーンは、既視感ありありオンパレード。上昇志向の強い女とか、金に執着する娼婦風のロシア人女、掃除に一生懸命なつつましい女、未練たらたらの年増女、ちゃらちゃらしたアナウンサー女、政治家を陰で支え続ける内助の功の妻。どれも紋切型すぎて読むに耐えません。これもやはり「小説らしさ」にこだわった結果の、典型的にすぎる人物描写です。これなら韓流ドラマだとか昼ドラでも見てた方が映像プラス音もあるぶん迫力があって楽しめます。つまりこれが小説で書かれる意味がまったく感じられません。

ものすごく気負うか、紋切型をなぞるかで、うまく書く力をコントロールできていないのも新人ならではだと思うのでもし次の作品を書くことがあったら、そういう肩に力が入りすぎるところや、無防備に力を抜きすぎるところを修正して、もうすこし読ませるものを書いていただけたらと思います。というかこういう作品がそもそも書きたかったのかな。書きたかった作品というよりは、小説を書いていくうちに紋切型をなぞってしまっという印象をうけました。あたかも書き手が「息切れ」しているかのようなこの作品。楽しめませんでした。
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