スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

橋本治「安政元年の牡羊座」

出典:『群像』2013年2月号
評価:★★★☆☆

12星座にちなんだ短編を12人の作家がそれぞれ分担して執筆というなんともギャルギャルした趣向の『群像』はどこにむかっているのでしょうか。ギャルギャルした企画の、ギャルギャルしたトップバッターとして『桃尻娘』の橋本治をもってくるところもなんとなくにやけてしまいますが、作品も短編らしく肩の力が抜けて読めるもの。橋本治の語りが光ります。

冒頭から

これは、いい加減な話である。(p.9)

と一行だけで作品のトーンを宣言しておいて、何度か同じ注意を促す。読み手としては、まんまとこの催眠術にかけられていってしまい読む方もいい加減に力が抜けてリラックスする状態で読むことができました。

作品を読めば、舞台設定は幕末の山陽の小藩、主人公その藩で渋柿の収穫を仰せつかった「柿奉行」の男、笠間甚左衛門。ともすると「時代考証がなってない!」「こんな時代にこんな言葉づかいするはずない」云々と枝葉末節が気になって批判的なスタンスをとってあらさがしをしてしまう読者の機先を制するかのように、「この話はいい加減だ」が語り手によってくりかえされるのは、うまい方法だなと思いました。

この語り手が、主人公にたいしてツッコミをいれたりや冷や水を浴びせたりするような距離感が絶妙。「牡羊座」担当ということで、牡羊座生れの主人公なわけですが、詐欺師の男に「牡羊座こそ一等すばらしい星座である」といわれて、それまでの自分の世界観をガラッとかえてしまうほど暗示にかかりやすい単純な主人公。その主人公にことあるごとに語り手がいれるツッコミが、たとえば

牡羊座生まれの常として、笠間甚左衛門は他人の星座など眼中にない。「牡羊座が第一等と言われ、知性と戦いの星だ」と言われれば、それだけでその気になってしまう。「我こそが一番」と思い、全人口の十二分の一が牡羊座の生まれであることは頭に入れず、「我」ばっかりが一番と思う。テレビの星占いを見ても、牡羊座や乙女座や蠍座の運勢がよくて、牡羊座の運勢がよくないと「今日は特異日だ」と決めてかかるクチである。(p.14)

という感じ(笑)。なんども「いい加減な話である」と、読者に刷りこんでおいてこそ、このツッコミが決まります。司馬遼太郎の語りをもっとずっといい加減にしたような語り口には、橋本治の名人芸が光りました。短編らしい短編で面白かったです。
スポンサーサイト

コメント

Secret

プロフィール

読む人

Author:読む人
小説の感想を、自分基準で。コメントはご自由にどうぞ。

★☆☆☆☆(面白くない)
~★★★★★(面白い)で評価。

最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
カウンター
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。