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日和聡子「湖畔情景」

出典:『新潮』2013年1月号
評価:★★★☆☆

登場するのは、河童に人魚に龍。河童が縫製機を動かす工房に人魚が訪ねて来て世間話をし、買い物途中の人魚が龍の背中にのせてもらう、というような話。河童にしろ人魚にしろ龍にしろ、あまりにも人間臭い会話をするし、しぐさも人間臭いので、そうした想像上の生物の名称はメトニミーとして使用されているのかなと思って読み進めていました。が、龍が空を飛ぶにいたってそうではなく、ほんとうの(?)河童やなんかとして描いているのだと読みを途中でギアチェンジしました。

どこかすっとぼけたような味わいのある作品で、それぞれの発言や内心独白にキャラクターがうまく出ています。他人には強く出られない河童が、助手にはキツくあたって切れ気味に仕事にいそしむ裏表ある性格、他人のことなど意に介さず自分の都合だけでいいたいことを言ってすっきりする人魚、律儀な龍。どれもすごく人間臭く、異形の外貌とのギャップ(実は作中には外貌にかんする描写はそれほどありません)にくすぐられます。NHKのEテレで、子供向けの人形劇を見ているような感じでしょうか。もちろんこの作品は子供が読んでもそれほどおもしろくはないでしょうが、年齢が上の人が読めば、自分の知り合いに河童や人魚や龍を当てはめてクスクスわらいながら読んでいる、そんな作品な気がします。

人間の姿をとっていない、ということが前提なので、描写の仕方によってはモノにもなってしまう。たとえば龍なんかは車みたいに描かれます。これがまたおかしい。

最後まで安全飛翔を守りつつ、丘の上の町からは幾らか離れた人気のない崖のそばにいったん身幅を寄せ、仮に下り立ちて、背上の人魚を降ろすべく、できるだけ背を低くした。そこまでは頼まれていたわけではなかったのに、龍は人魚を地へ降ろす際、背骨を地に沿わせるようなイメージを浮かべてみるよう試みて、可能な限りその傾斜をなだらかにしてやろうと努めたのだった。(p.174)

背中に人魚をのせて空を飛んで、着地しようとする場面ですが、まんま車の運転(笑)。「身幅」なんてことばからは、「車幅」が見えかくれします。この場面の前の、龍と雨雲との関係について龍自身そのメカニズムがよくわからず一人(一匹?)悩むところも秀逸です。

ほのぼのとしたおかしみのある短編にふさわしい作品でした。感想を書きながら思ったけれど、吉田戦車「伝染るんです。」的な世界観なのかなあ、これ。
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