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海猫沢めろん「モネと冥王星」

出典:『群像』2012年9月号
評価:★★☆☆☆

父を失ったモネという中学生の少女が母と、瀬戸内海にうかぶアートの島で暮らす。生と死に満ちた島でモネはまどろむ。まとめるとこうなるのかな。海猫沢めろんによる仕掛けが随所にあるものの、その仕掛けがうまく機能しているのか読み終わった後も疑問が残りました。

話の途中で母が死んだ(とは正確にはいってないのだけれどそのようにうけとれる)という連絡がモネのもとにはいり、かとおもうと次のシーンでは母がふつうに朝食の準備をしていたり。もちろんこれは作者の意図的な仕掛けとして、たとえば「死んでしまったお母さんがその後の世界で見ていた夢だった」とか、逆に「死んでしまったモネをお母さんが夢にみた」とか、「そもそもはじめから全部モネの夢だった」とか、幾つかの可能性を順列組合せで考えられるようになっているものの、どれかの説に決まるわけではなさそう(僕の読みが浅いからかもしれません)だし、どれかの説を採用できる可能性が高いわけでもなさそうです。合理的に読みとくヒントが少なく、モヤモヤしてしまいます。もちろん、幾つかの可能性を楽しんだらいいじゃないかという意見もありますからこれは完全に僕の好みの問題です。

冒頭の、曖昧さをかます出だしはうまくいっていると思いました。

 わたしは、白い貝殻を敷きつめ細く曲がりくねった山道だった。
 その上を母が歩いていた。
 白い雪みたいな山桜の花びらを浴びて、午睡から目覚めたばかりらしく寝惚けた目で、水場のわきの白い猫柳をゆらして、鶯のなく花曇りの景色のなかを進む。
 あたりには桃と梅の花の匂いが満ちている。
 母はずっと目を閉じていて、足元の道がわたしだということに気づかない。
 心が輪郭をなくし、あたりにうすくとけていく──。(p.54)


あとは作者の仕掛けか、たんなる凡ミスなのかもよく解らないのは例えば

わたしは心地よいまどろみの襞に巻かれつつ(p.55)

眠いのか苦しいのかわからない微睡みのなか(p.80)

作品のキーとなる「まどろみ」が、一方はひらがなで、もう一方は漢字で書かれています。語られている世界のフェーズが、それぞれで異なるのならこの書き分けもわかるんですが、これ一つだと証拠として弱い感じがします。他には、突然モネの家にいる男の書き分け。は意識的にかき分けているようで、描写をとり出すと

すっきりとした一重の茶色い目(p.72)

瞬きしない黒い瞳(p.76)

と言う感じ。これも外見の描写が異なるものの、どの箇所でも男としか言及されません。「だれそれ」とははっきりと名指されないので、茶色い目のほうは宇宙人、黒い瞳のほうは死んだお父さん(逆もあり)と解釈はできるものの、確定はできません。モヤモヤする(笑)。

海猫沢めろんファンのような人が、部分部分に分解して読み解くことがあれば、実は複数の解釈で揺れ動くような話ではなく、カチッとパズルのピースがはまるようにできているのかもしれません。話の構成の仕方も、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、というパートに分けられており、その内部でさらに、「*」や一行空きによってさらに場面転換される(のかもしれない)ので。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲは意識的にわけられているとしても、一行空きとか「*」は作家によって結構場当たり的に使われており、この作品の場合も場当たり的に使われているのか、それとも計算されて使われているのか不明。特段思い入れのある作家ではないし、話の内容も文体も僕の好みではないので、ずぼらな僕は細かく読むまでする気は起こりませんが(笑)。
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